まず、日本の平均年収を見てみる
手順
- 世界版のデータテーブルを開き、「国連加盟国」のボタンを押す
- 「カラム」ボタンで「暮らし」を選ぶ
- 日本の行の「平均年収 ($, PPP)」を見る
日本は $50,183(2025年)。これを、2025年の平均の為替レート(1ドル = 約149.7円)で円に直すと、約751万円になる。
でも、同じ OECD のデータには、円のままの値も入っている。それは 5,185,703円(約519万円)。約751万円とは、約230万円もずれている。どちらかが間違っているのかな?
750万円ではなく、519万円
答えは、519万円が正しい。ずれの原因は、列の名前の「($, PPP)」にある。
PPP は、購買力平価(Purchasing Power Parity、略して PPP)のこと。この列のドルは、為替レートではなく、この購買力平価で換算した(別の単位に直した)ドル(PPP ドル)なんだ。どんな比率なのかは、日本の円で確かめてみよう。
| 日本の平均年収(2025年)の表し方 | 換算に使う比率(1ドルあたりの円) | 年収の表示額 |
|---|---|---|
| 円のまま(OECD) | — | 5,185,703円 |
| 購買力平価(PPP)で換算 | 約103円 | $50,183 |
| 為替レートで換算 | 約150円 | $34,650 |
519万円 ÷ $50,183 を計算すると、1 PPP ドル = 約103円。為替の1ドル = 約150円とは、かなり違う。だから PPP ドルに為替レートをかけると、元の円より約1.45倍も大きな金額になってしまうんだ。PPP ドルを円に直すときは、PPP の比率(約103円)を使う必要がある。
平均年収から逆算した約103円(5,185,703 ÷ 50,183 = 103.34円)は、World Bank が公表している2025年の日本の「家計の買い物で比べた購買力平価」(103.3円)と、小数1桁に丸めると一致する。つまり、アメリカで1ドルで買えるものと同じくらいのものが、日本では約103円で買える、という計算だ。ただし、これはいろいろな買い物をまとめて比べた値なので、すべての品物がこの比率になるわけではないよ。
為替では150円払わないと1ドルにならないのに、この物差しでは103円で1ドル分の買い物になる。だから、この物価の物差しで見ると、日本の給料で買える量は、為替でドルに直した額から思うより大きいことになるんだ。
ちなみに、国税庁の民間給与実態統計調査では、2024年に1年を通じて働いた民間の給与所得者の平均給与は478万円(正社員は545万円)。OECD の約519万円は2025年の値で、パートの人もフルタイムで働いた場合に換算した平均だ。調べた年も、数える人も、計算のしかたも違うので、この差を1つの理由だけで説明することはできないんだ(→ 年収の数え方の違いは W0012)。
発見 — 物差しを変えると、順位が動く国がある
同じ OECD の平均年収を、PPP のドルと為替のドルの両方で並べてみよう。2025年の値がそろう34か国の中の順位だ。データテーブルには為替のドルの列はないので、この表は保存データから筆者が計算して作ったよ。
| 国 | PPP のドル(順位) | 為替のドル(順位) | 1 PPP ドル | 為替の1ドル |
|---|---|---|---|---|
| 🇮🇸 アイスランド | $100,605(1位) | $130,493(1位) | 166.6クローナ | 128.4クローナ |
| 🇨🇭 スイス | $92,285(3位) | $118,281(2位) | 1.07フラン | 0.83フラン |
| 🇺🇸 アメリカ | $86,977(4位) | $86,977(4位) | 1ドル | 1ドル |
| 🇮🇪 アイルランド | $70,113(12位) | $71,617(6位) | 0.90ユーロ | 0.88ユーロ |
| 🇩🇪 ドイツ | $76,285(9位) | $61,968(12位) | 0.72ユーロ | 0.88ユーロ |
| 🇮🇱 イスラエル | $57,426(23位) | $60,817(15位) | 3.66シェケル | 3.45シェケル |
| 🇰🇷 韓国 | $61,259(18位) | $37,904(23位) | 880ウォン | 1,422ウォン |
| 🇯🇵 日本 | $50,183(25位) | $34,650(25位) | 103.3円 | 149.7円 |
| 🇵🇱 ポーランド | $49,074(26位) | $26,924(30位) | 2.06ズウォティ | 3.76ズウォティ |
| 🇲🇽 メキシコ | $24,463(34位) | $14,381(34位) | 11.3ペソ | 19.2ペソ |
日本はどちらで数えても25位で、順位は変わらない。でも、イスラエルは23位から15位へ、アイルランドは12位から6位へと、為替のドルで見ると順位が大きく上がる。逆に、韓国は18位から23位へ、ポーランドは26位から30位へと下がる。
なぜ、順位が動くんだろう?
表の右の2列を見比べてみよう。
- 「1 PPP ドル」より「為替の1ドル」のほうが小さい国(アイスランド、スイス、アイルランド、イスラエルなど): 為替では通貨が高めだけど、国内の物価も高い。だから為替のドルにすると大きく見えるけれど、物価をならす PPP では差が縮む
- 「為替の1ドル」のほうがずっと大きい国(韓国、日本、ポーランド、メキシコなど): 為替で見ると通貨が安いけれど、国内の物価も安め。だから為替のドルにすると小さく見えて、PPP で直すと大きくなる
- アメリカ: PPP はアメリカの物価を基準にしているので、どちらで数えても同じ
つまり、為替のドルは「そのお金を外国のお金に両替したら、いくらになるか」、PPP のドルは「そのお金で、その国の中でどれだけの物やサービスが買えるか」に近い物差しなんだ。
どちらの物差しを使えばいい?
- その国の中で、給料でどれだけ買えるかを比べたいとき: PPP のドル。物価の違いをならしてあるので、「その給料でどれだけ買えるか」を比べやすい
- 海外で使う、輸入品を買う、外国と取り引きするとき: 為替のドル。ただし、実際に両替するときは、その日の為替レート(と、かかるなら手数料)で金額が決まる。この記事の為替のドルは、2025年の1年間の平均で計算した値だよ
どちらが正しい、というわけではない。大事なのは、表の「$」がどちらのドルかを確かめること。このサイトのデータテーブルでは、列の名前だけでなく、見出しの下の小さな注記や「?」の説明も見てね。たとえば「所得の中央値 ($/日)」は、名前に「PPP」とはないけれど、注記にあるとおり2021年の購買力平価で換算したドル(2021年 PPP ドル)なんだ。
この数字から読み取れないこと
- PPP は推計値: PPP は、世界中の物価を調べ、その資料から計算して見積もった値(推計値)。何の値段で比べるかでも少し変わる(2025年の日本は、国全体の生産物で比べると約97円、家計の買い物で比べると約103円)
- 為替は1年の平均: この記事の為替レートは2025年の1年間の平均。為替は毎日動くので、日によってドルの金額は変わる
- 平均年収は「ふつうの人」の年収ではない: OECD の平均年収は平均で、パートの人もフルタイムに換算した値。真ん中の人の年収(中央値)とは違う(→ W0012)
- 税金を引く前の給料の比べっこ: OECD の平均年収は、税金や社会保険料を引く前の額。手取りや、家族の人数、公共サービスの違いはならしていないので、家族全員の暮らしの豊かさが同じ順番になるとは限らない
- 34か国だけの比べっこ: OECD の平均年収は OECD 加盟国(38か国)の分しかなく、そのうち2025年の値がない4か国(チリ・コロンビア・コスタリカ・トルコ)は、この表の順位から外した
自分でも確かめてみよう
データテーブルで「国連加盟国」のボタンを押してから、「カラム」ボタンで「暮らし」を選ぶと、「平均年収 ($, PPP)」の列が出てくる。列の見出しの「?」を押すと、何のドルかの説明が読めるよ。この記事の表にある国なら、2025年の PPP ドルに表の「1 PPP ドル」をかけると、だいたい元の国のお金での年収に戻せる(比率を丸めてあるので、ぴったりにはならない)。
データテーブルを開く →出典と計算方法
- 平均年収: OECD「Average annual wages」(OECD Data Explorer の DSD_EARNINGS@AV_AN_WAGE、2026年9月15日取得)。雇われて働く人をフルタイムに換算した1人あたりの年間賃金の平均、税引き前。自国通貨の値(名目)と、2025年価格(物価の変化をならして2025年の値段にそろえたもの)・2025年の購買力平価で換算したドルの両方を保存している(world/extra_indicators.json)
- 為替レート: World Bank WDI「Official exchange rate (LCU per US$, period average)」(PA.NUS.FCRF)の2025年の値(2026年9月25日取得)。日本の値
- 購買力平価の照合: World Bank WDI「PPP conversion factor, households and NPISHs Final consumption expenditure」(PA.NUS.PRVT.PP、日本の値)の日本 2025年 103.33658円、「PPP conversion factor, GDP」(PA.NUS.PPP、日本の値)の日本 2025年 97.08005円。どちらも2026年9月25日に World Bank API で確認した。記事の平均年収から逆算した 103.33585円とは、小数1桁に丸めると一致する(103.3円)
- 計算方法: 「為替のドル」は自国通貨の平均年収 ÷ 2025年の為替レート。「1 PPP ドル」は自国通貨の平均年収 ÷ PPP ドルの平均年収。どちらも筆者が保存データから計算し、表では丸めて表示した。順位は丸める前の値で数えた。34か国の表は筆者が作ったもので、データテーブルには為替のドルの列はない
- 順位の範囲: 国連加盟国193か国のうち、2025年の平均年収と為替レートがそろう34か国(OECD 加盟国38か国から、平均年収が2023〜2024年の値のチリ・コロンビア・コスタリカ・トルコを除いた)
- 国税庁の平均給与: 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与 478万円、正社員 545万円)
- 確認日: 2026年9月25日
まとめ
データテーブルの「平均年収 ($, PPP)」のドルは、為替のドルではなく、購買力平価(PPP)のドル。日本の $50,183 は、為替レートで円に直すと約751万円になってしまうけれど、PPP で直すと元の約519万円に戻る。
為替で見るか PPP で見るかで、イスラエルやアイルランド、韓国のように順位が大きく動く国もある。「$」の表を見たら、それがどちらのドルかを確かめる。それだけで、数字の読み違いはぐっと減るよ。